和食がユネスコの無形文化遺産に認定されて以来、「だし」が注目されてきました。
鮮度の良い食材、乾物類、発酵させた食品を用いて、一汁一菜~三菜を臨機応変に調えるのが和食の基本ですが、このときにお醤油や味噌などの調味料とともに不可欠なのが「だし」です。
日本の「だし」材料のうちで、国内の生産地から消費地までもっとも長い旅をしているのは【昆布】。
『続日本記』には蝦夷地から朝廷へ献上した記録があるくらいで、かの地の人々は古くから昆布を食べていて、干して折り畳むという保存法を編み出し、交易品や献上品として活用していました。
近年【俳句】がじわじわと注目を集めています。
「古臭い」「面白くない」「難しい」など、以前は年配の方の趣味といったイメージでしたが、TV番組の影響もあって、人気芸能人が試行錯誤で俳句を詠み、披露し、評価を受ける様子は真新しく、若い方々にも受け入れられている印象です☺
本日は、その【俳句】に注目したフードジャーナリストである向笠千恵子さん著書、「おいしい俳句」という書籍をご紹介致します。
取材で出会った食べ物の思い出を「一食一句」として残された句を集めたそうで、季節や旬のもの、地のもの、様々な食材に触れた際の句がたくさん掲載されています。
食×俳句×その土地の息吹が感じられて、あっという間に1冊読み進んでしまいました☺
本の中で【昆布】についてのページもありましたので少しご紹介。
昆布は海底の岩礁にくっついて成長し、採取するのは主に2年藻。春からぐんと伸び、夏が近づくと、丈も肉付きも急成長します。大人の背丈の2倍にもなって肉厚です。
夏に収穫するので、歳時記でも昆布刈りや昆布は【夏の季語】になっています。
昆布漁は資源保護のため出漁はべた凪の好天日だけと決められていて、夜明けにその日の漁の有無が決定します。
業界には「六十手数の折り昆布」という言葉があります。昆布は干しただけでは売り物になりません。蒸らしては伸ばし、端を切り取り、折り畳み、熟成させて、と気が遠くなるほど手間暇をかけなければなりません。これらの作業を、昆布漁師は年寄りがいる家庭ならその手まで借りて、夜なべ仕事でこなします。
【千年余 浜の営み 昆布刈り】石澤敏秀
石澤さんには【昆布干す 浜に総出の 三世代】という句もあり、生産者に向けた眼差しのあたたかさが印象的です。
最後に著者の昆布の句を一つご紹介
【北の海 揺らしつ取るや 昆布だし】向笠千恵子
日本の海は環境や気象の悪化で海が痩せ、昆布漁師も減り、養殖や輸入品に押されています。
いくら「だし」が注目されても、良質な昆布なくして、おいしい「だし」は取れません。
このことを心に留めていただき、【昆布】、ひいては【和食】の未来を考えるきっかけになれば幸いです。