本年、年が明けて1月2日PM9:00、NHKの特別番組
和食が世界遺産?~おいしい日本 1万5千年の旅~」 が放送されました。
その撮影が行われたのは、昨年10月4日、奥井社長が「昆布と日本人」を執筆中のさなかの、
そろそろ、原稿の仕上げに入ろうかという時でした。
どんな番組が作られるのか?あまり知らされないまま・・
一人のフランス人シェフ、ダヴィッド・ブランさんと取材クルーの方々が、
東京から、やって来られました。
ブランさんは、日本語を話されましたが、撮影での説明では、身振り手振りが加わります。
ブランさんの言葉は本当に少ないものでした。。
けれど、限られた表現力でストレートなコメントをされました。
それは、取材のあいだ、すべてにおいて。。
日本人が都合良く添える、飾り言葉のすべてを削ぎ落とした一言のようでした。
「あっ、コレ違う」 など。
張りつめた空気を感じました。
社長の視線は鋭さを増し、撮影にのぞむ姿勢には、これまでにないものを感じました。
この一枚の写真は、ヴィンテージ昆布のだしの試飲をするために、 撮影の舞台セットを設営中、悩まされた一枚です。 日本らしさを強調できる「のれん」の前で、「だし」の試飲風景を映し出したかった わけですが、奥井の九曜紋がワイングラスにすっぽり入り込んで頓挫。 この場に置いて、グラスの中で何をかを主張する九曜紋。 私は、ここで、「昆布と日本人」の中で、特に惹きつけられる文言が今、思い浮かびます。
●第2章 「昆布商の140年」 p67
先代(社長のお父さん)の口癖は、
「べらべら喋るんじゃない。・・良質の昆布をお客様にきちんと送っていれば、必ず報われる」
かくして、九曜紋ののれんは、横手側へとさりげなく掛けなおされました。
そうそう、 その前に、年代別のだしの色の違いを撮影するシーンでも・・・
時間が随分かかってしまいました。
「昆布と日本人」のなかでも、どうしても差し込めなかったのが、ワイングラスにそそがれた年代別のだしの色の違いを映した写真です。 モノクロ写真で表現したのでは、何も伝わらないという理由でした。
●第3章「昆布とワインの意外な共通点」p131
「蔵囲」という貯蔵過程で熟成が生じ、複雑にまざり合った香りとうま味が作られます。 こういう昆布からは、深い琥珀色で雑味のない、うま味だけが凝縮しただしが出るので 格調の高い日本料理を引き立てる名脇役として、非常に評価されるのです。
「昆布と日本人」の社長のこの文面から、この場での引き下がれなかったこだわりと
一貫した「蔵囲」に対する誇りと自信を思いしらされました。
番組の中で、「蔵囲昆布」が登場したのは、ほんの短い時間でしたが、
撮影に要した、緊張の時間は長いものでした。
撮影を終えて、始めて、ほんの少しだけ、それは本当にほんの少しだけ・・。
安堵の笑みが見られました。ブランさんと奥井社長の視線から。
番組を制作された、後ろ姿の植木さんが、和食の真髄に迫る番組製作にフランス、
アフリカ、そして、日本の各地、この福井県敦賀市へと奔走されました。
「和食が世界遺産」という歴史を作る至高の番組に、日本の数々の優れた「だし」
と共に、取り上げて頂き、本当にありがとうございました。