皆様ご存じのとおり、ただ今京都大学総合博物館にて弊社の昆布が展示されております。
この特別展、6月29日(日)まで…駆け込み博物館をおすすめいたします。
さて先週末、菊乃井の村田吉弘さんの講演があるということで、京大博物館へ行ってまいりました。
「和食 無形文化遺産登録への道のり」
笑いあり、涙はないけれども、大変興味深いお話…ありがとうございました*
講演を聞いていたのは調理師の卵さんたちや料理関係や教育現場にお勤めの方、etc…皆さま熱心にメモをとり、頷き、村田さんのお話にのめりこんでおりました。
まずは、出汁のお話。原料の昆布やかつお節のお話から…
昆布で出汁を引くときは65℃で1時間…80℃以上だと多粘糖体(ねばねば!?)が昆布の表面をコーティングしてしまい、グルタミン酸が出ないのだとか。なるほど!
一方、かつお節は80℃以上でイノシン酸が出るそうです。が、雑味(渋みとか苦みとか臭みとか…)も出てしまうそう。なので、85℃→火を止める→かつお投入!!そして10秒…→かつおを取り出すというのがbestなだしの引き方なのですって。お勉強になりますね。
昔ながらの伝承には間違ってるものが多いそう…たとえば青菜を湯がくときにお塩をいれると青く仕上がりますよっていう、あれ。実は昔の塩には15%の塩化Mg(にがりの主成分)が含まれていて、塩化Mgが葉緑素の定着に一役買ってるそうなのですが、精製塩には含まれていないので意味ないんです。って村田さんも学者先生に教わったそうです。(←笑うところ)
同様に出汁の引き方も科学的に検証されて変わってきているのですね。
でも聞きながら、改めて昔の人は偉大だったと思うのですよ。生活の知恵って簡単に言うけれども、自分で見つけるわけですから。その時は沸騰直前で火を止めるっていうのが一番美味しい出汁の引き方で、そうだったのだと信じます*これは余談。
【↓特別展の入り口にぶら下げられた昆布たち。会社と同じ匂いです♪】
話は海外へ…
そもそもうま味(umami)ってなんですか?
どうやって説明するのですか?
これってとっても難しいことです。うま味って感じるものだし、言葉にすると浮いてしまう。うま味という味覚を中心に料理を組み立てる国って、日本しかないそう。だから海外の方に理解して頂くのは難しい。
そのような環境の中で日本料理を世界に普及するにはどうしたらよいか…と料理人の方々は研究しました。
まず出汁を引く材料を考えました…世界中にあって、宗教に引っかからなくて…それがトマトと鶏肉ですって。
これがすごいらしいのです。水の硬度に関係なく出汁が引けるし、昆布&かつお節に遜色ない味が出せる。試しに村田さん、トマト&とり節の出汁でお料理して、お母様と奥様に食べてもらったそう。わからなかったんですって、すごいですねー*世界中の方に、うま味、感じて頂けるでしょうか。
多くの方のご尽力の結果?「和食」が世界文化遺産に登録されました。
登録されたということは、保護活動をしなくてはならないのです。ユネスコに約束したので、私たちは和食を作らなくてはなりません。そんな風に考えたことなかったなぁ。登録されて良かったね*と思った私みたいな人、たぶんいっぱいいるでしょう。間違っていたらごめんなさい。
で、村田さんが言っていました。申請した時の4項目についてです。
1.多様で新鮮な食材とその持ち味の尊重
2.自然の美しさや季節の移ろいの表現
3. 栄養バランスに優れた健康的な食生活
4. 年中行事との密接な関わり
1と2は意味がない。だって、そんなことしない国ないもの…ですって。感じ方、表現の仕方に違いはあれど、持ち味を尊重しないで料理する人なんていないだろうし、季節だって表現してる。日本人が見たら違う!!って思うかもしれないけれど、その国ではそれがbest*確かに…
3の栄養バランスに関しては、サザエさんの時代が一番良かった…っていうのは家庭科で習った記憶がありますね♪
大型霊長類はいろんなものを食べないと生態系のバランスが崩れてしまうから、まぁ、バランスよく食べるのは当たりまえなのだそうで、ゴリラもバランスよく色々な葉っぱを食べてる。と、京大のゴリラの先生に教えてもらったそうです。豆知識◎
4は…お雑煮とか、そういうもののお話。でも、私、1と2と同じように年中行事と密接にかかわらない料理を持つ国ってないと思いました。じゃあ、和食ってなんで登録されたんだろ…と考えていたら話が先に!!
【↓昆布蔵再現!あれ、ここ敦賀だっけ?】
菊乃井の村田さんは京料理の料理人さんです。京料理がどのように形を成したのかというのは歴史のお話が必要。
むかしむかし、4つ足の動物は食べられず、油は高価で使えず、川魚、干魚、野菜と材料は限られていた時代がありました。京の都には公家という身分の高い方々がおりまして、昼2時間、夜3時間のご飯の時間がありました。運動もせず、移動は牛車です。その方たちが飽きないような食事を工夫しなければなりません。結果、京料理が出来ました。どんどはれ。
【↓私たちも滅多にお目にかかれない20年蔵囲利尻昆布】
でも、私たちが作ることを求められている和食は、私たちがイメージする京料理のようにハードルは高くないのです。
料理人みたいにきれいに作れなくてもいい。彼らは仕事ですからね。日本人は野菜をおかずにご飯を食べる民族だから、そうすればいいだけの話。米とお野菜と少しの魚と…国内で完結する、それが日本の誇る和食文化なんだって。ちょっと端折りすぎたか…
村田さんが伝えたかったのは、難しく考えなくてもよいってことなのかな…と勝手に考えています。
最後の質疑応答でこんな質問がありました。
「簡易だしに子供たちの舌が慣れてしまうのは良くないことでしょうか」というような内容。
時と場合に応じてというのが村田さんの答えでした。
忙しい朝に無理して出汁を引かなくても、ほんだしでお味噌汁を作ってご飯とお漬物食べれば立派な1食だし、山の上で食べるカップヌードルはその場所では最高の食事。時間がある時にお出汁を引いて、手をかけてご飯を作ればそれでよいと。子供の目の前にカップ麺を差し出すのではなくて。
あ、料理は愛情なのか!と思ってしまいました。単純に。
子供がおむすびを美味しそうに頬張るのは、手で結んだからなんだ。だから特別なんだって。
【↓京大博物館のミュージアムショップ、MUSEP ★】
【↓弊社商品を多数並べて頂きました*こんぶうたもおしゃれに展示中】
あぁこれ、ただの感想文;;
村田さんのお話から色々なことを考えました。すごく考えさせられました。
大変充実した時間だったと思います。
その後の出汁の試飲もそれぞれに違いがあって、面白かったです。これがこの店が守ってきた味なのだと感激。味の違いは恐らく、昆布屋に就職しなかったら気づかなかったのではないかなという気がします。日々勉強*
また村田さんのお話を聞けたら嬉しいです*
以上、やまぼうしでした。