「昆布とワインの詰合せ」と聞けば、え?何それ、と思うが、これを「昆布と葡萄酒」といえば、ふっと和んでしまう。昆布も葡萄も天然の産物ということが分かっているからだ。昆布は海の、葡萄は山のという違いはあっても、ともに夏の強い太陽と四季の気候がなければ育たない、自然の恵みのものなのである。
ワインは、葡萄の果汁がそのまま変化するものなので、出来具合は毎年違うのが当り前。だから、その年の情報という意味で「ヴィンテージ」を持つ。そうだとしたら、同じ様に自然が育てた昆布にもヴィンテージがあってもおかしくはない。いや、むしろ、産年表示は必要なのではないだろうか。
そのうえ、ワインが壜に詰められてカーヴの中で何年も寝かされ熟成するように、昆布も、真夏の浜の太陽で一気に乾燥させて旨みを閉じ込めたあとは、やはり専用の昆布蔵で数年囲われて旨みを深めてゆく。
晴雨、寒暖、風波、静荒――環境に変化はあっても、同じ年の日本の気候の中で育ち生まれたもの同士が、食卓の上でその身上を語りあうことになるとしたら、こんな愉快で楽しいことはない。昆布とワイン、この組合せは偉大な農産物仲間だから合わないはずがない、と料理人も断言している。
2002年の日本は、昆布にも葡萄にもとても良い年だった。
この年、あなたには、どんな年でしたか。